うみがめ第11号

「おもてなしの心」  院長 春山 康久

2020年の夏季五輪が東京都に決定しました。7年後には東京都で2回目の夏季五輪が開催されます。今回の東京五輪招致成功の決め手になったのは日本の最終プレゼンにあったといわれ、中でも滝川クリステルさんのスピーチが絶賛されています。彼女個人の魅力、流暢なフランス語、豊かなジェスチャー、いずれも素晴らしいもので、日本人の「おもてなしの心」が話題になりました。改めてその意味を考えてみました。「おもてなし」とは「もてなし」に丁寧語「お」を付けたことばであり、「もてなし」の語源は「モノを持って成し遂げる」という意味であるそうです。お客様に応対する扱い、待遇とも言われます。「おもてなし」のもう一つの語源は「表裏なし」、すなわち表裏のない「心」でお客様をお迎えするという意味であります。「おもてなし」には目に見える「モノ」と、目に見えない「コト」(言葉、表情、仕草など)があり、「おもてなし」とは「思いやり」をできる限りの「モノ」と「コト」で、表裏の無い心で誠実に伝えることであり、茶道の「一期一会」に通じるそうです(岩下幸功)。

1964年の東京夏季五輪を契機に東京モノレール、国立競技場、名神高速道路、首都高速道路等が整備され東京は近代都市として生まれ変わりましたが、当時の重症心身障害を取り巻く環境は劣悪で国の施策として整備されるまでには時間がかかりました。昭和23年重症児の収容施設(小林提樹)、昭和27年知的障害児施設「花園学院」(谷口憲郎)、昭和28年「近江学園」(糸賀一雄)、昭和33年「秋津療育園」(草野熊吉)、昭和36年「島田療育園」、昭和38年「びわこ学園」、「拝啓池田総理大臣殿」(水上勉)、厚生省事務次官通達「重症心身障害児療育実施要綱」、昭和41年厚生省事務次官通達「重症心身障害児(者)の療育について」、昭和42年児童福祉法の一部が改正。この頃になって民間の施設も全国的に少しずつ設立され、国立療養所にも委託病棟が設けられました。重症心身障害児施設が病院認可児童福祉施設として認可され、国の補助、各補助団体委託も制度化されました。

前回開催の東京夏季五輪は敗戦後急速な復活を遂げた日本が、再び国際社会に復帰したことを示した大会でありましたが、2020年開催の東京夏季五輪では前回大会のレガシーを活用した「東京モデル」の創出が求められ、そこに成熟都市、日本でのオリンピック開催の意義があると言われています。前の大会から50年が経過し、重症心身障がい療育も成熟の時代が求められます。今後HAL(Hybrid Assistive Limb)、iPS細胞など先進医療技術の進歩によって重症心身障がい児(者)を取り巻く環境は明るい未来が待っています。2020年開催の東京夏季五輪が障がい児(者)にとって「お・も・て・な・し」の大会になることを願いたいと思います。

HAL(Hybrid Assistive Limb);体に装着し、身体機能を補助・増幅・拡張することで手足の力を増強するロボットスーツ。筑波大学山海嘉之教授が開発。

うみがめ第11号(PDFファイル)

  1. 院長コラム
  2. 新人職員紹介
  3. 療育活動報告
  4. 保護者会活動から

2013.12.01

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