うみがめ第9号

うみがめ第9号(PDFファイル)

「外来管理棟移転によせて」 理事長 西島 英利

愛泉会日南病院がオープンしてからあっという間に11年目に入りました。
今、病院の全面建て替えを始めまして昨年12月25日に外来管理棟が完成いたしました。
新館で外来を行っていますが、皆様には御不便をおかけしているのではないかと心配しております。何かあれば、いつでも御意見をいただければと思います。
今回、新しくMRI(脳の精密検査等の機械)を導入しました。
重症心身障がい児・者の方々の新しい治療法への開発にも繋がるのではないかと期待しております。また、一般の患者さんには脳疾患への精密検査等にも利用できるものと思います。今後2期目、3期目へと建築を進めていきますが、患者様の入院治療を続けながらの作業ですので、時間がかかることを御理解いただきますようにお願い申し上げます。
完成した折には、一般の方々、重症心身障がい児・者の方々の生活の質の向上のためにリハビリテーションの更なる充実にも力をいれる予定です。
これからも皆様方の御指導をよろしくお願い申し上げます。

「管理・外来棟新築移転によせて」 院長 春山 康久

愛泉会日南病院の管理・外来棟は平成24年12月17日竣工式、12月25日に一般オープンしました。平成24年3月2日の起工式から9ヶ月間の工期で、現在は新しい外来棟での診療が行われております。昨年、当院は開院10周年を迎えましたが、節目の年での新築移転でありました。当院の沿革は66年の歳月を数え、56年の国立病院、民営化後の10年の歴史があります。現在は重症心障害児(者)施設(124床)と一般内科病棟(60床)がありますが、今回は重症心身障害児施設としての歴史を振り返ってみました。

  1. 国立療養所日南病院(昭和22年4月~平成14年6月)
    昭和22年4月、日南市油津梅ヶ浜に国立宮崎療養所日南分院として発足、昭和37年4月、風田の現在地に新築移転、昭和38年4月国立日南療養所と改称しました。
    肺結核患者の減少に伴い、国の方針により昭和47年4月、結核病棟の一部を一般病棟に変更し、昭和50年4月、重心障害児病棟40床(3病棟)、昭和52年6月、重心病棟40床増床(5病棟)とし、80床の重心児施設が開設されました。
    重心児受入れの準備として、スタッフ全員が未経験であったため、昭和50年1月、看護師は国立療養所再春荘(熊本)、国立療養所宮崎病院で実務研修を行い、開設に備えました。昭和50年4月28日、午前11時30分、医事係より「入院患者さんが着かれました。迎えに来て下さい」との連絡を受け、胸の鼓動を感じながら第1号の入所者を迎えました。川南の宮崎病院からの転院であったそうです。以後毎週2名ずつの入院がありましたが、当時は県立日南病院小児科医師に来て頂き診察をして頂いたそうです。ほとんどが小さなヨチヨチ歩きの子供で、泣きやまない子はおんぶして仕事をし、添い寝して寝かせたこともあったそうです。排尿訓練でやっとトイレでおしっこが出た時、スタッフ全員で大喜び、感極まってうれし泣きした婦長さん、以後サインや返答で尿意を教えるようになったそうです。
    4月に開設された重心病棟(3病棟)は10月には満床となり、以後満床の状態が続いておりました。翌年昭和52年6月には重心病棟(5病棟)40床が増設されましたが、1年後には満床となりました。重心児施設が重心児にとっていかに待たれていたかが解ります。
    昭和51年3月には父母の会が結成されました。国の医療政策により国立病院・療養所の再編成・合理化の基本方針が閣議決定、平成14年6月、国立療養所日南病院は民間移譲が決定しました。
  2. 愛泉会日南病院(平成14年7月~現在に至る)
    国から移譲を受けたのは、平成14年7月1日、午前零時丁度だったそうです。午前零時に病院の鍵が渡され、やっと病院の中に入ることが許されたとのことです。真夜中の儀式、いかにもお役所仕事とはいえ、聞いてびっくりしました。社会福祉法人愛泉会日南病院として発足、重心病床124床、一般病床60床がスタートし、初代院長は西島英利理事長が兼任されました。理事長が職員に向かって訓示された言葉、「いままでは国立だから、何をしても倒産しないと思っていたかもしれませんが、これからは選ばれる病院になるように、意識を変えてください。自分たちの病院に『来ていただく』という発想にならなくてはいけません」(西島英利 挑む医師)。官から民への移行で、職員の意識改革が強く求められましたが、合せて重心看護技術の向上のため平成14年10月から3ヶ月間、6名の看護師が3班に分かれて国立療養所南福岡病院の重心病棟、 超重心病棟で研修を行いました。
    平成16年4月、九州保健福祉大学より大堂庄三先生が第2代目院長として赴任されました。大堂先生は元宮崎医科大学小児科助教授で小児科学、特に臨床遺伝学、小児神経学が専門です。重心医療にリハビリは重要であるとの方針でリハビリ部門の職員(作業療法士、理学療法士、言語聴覚士)を多く採用し、当院の重心医療の拡充に努め基礎作りに多大の貢献して頂きました。またこの頃、宮崎県でもNICU(新生児特定集中治療室)の慢性的な満床、重度の知的・身体障害を持った子どもが入所する重症心身障害児施設の整備が求められておりました。西島理事長は愛泉会日南病院に超重症児の受入先施設の建設を決断され、宮崎医科大学産婦人科(池ノ上教授)、小児科(布井教授)、整形外科学(帖佐教授)の協力を取り付け建設準備に取り掛かりました。また職員は江津湖療育園(熊本市)施設見学、宮崎医科大学小児科での研修を積み、平成16年10月超重症心身障害児(者)の受入れ施設としての新病棟(1病棟)、44床がオープン、宮崎医科大学から超重症児の入所が始まりました。
    平成21年4月、県立日南病院より第3代目院長として春山康久が赴任しましたが、重心施設の老朽化に対して改築の機運が高まり、平成22年5月「病院の増改築に関する検討委員会」が設置され、新しい病院建設に向けた検討が始まりました。折しも平成23年3月11日に東日本大震災が発生し、地震、津波による多大な人的・物的被害を被ました。この震災を契機に、自然災害に対する備えが再認識され、重心施設の在り方も重要な課題となりました。施設の建設にあたり、「社会に開かれた病院」をコンセプトとしましたが、災害(地震・津波・火事)に強いこと、時代の要請に応えられる機能を有する事を重点項目として掲げ、平成24年12月25日新築工事1期分として管理・外来棟がオープンしました。これから2期(厚生・内科病棟)、3期(重心病棟)と工事は継続します。愛泉会日南病院はまた新たな歴史を重ねることになりますが、当院の開院以来掲げた病院理念「生命の尊重と人間愛に基づき、信頼される病院づくり」は変わることなく受け継がれます。

うみがめ第9号(PDFファイル)

  1. 理事長挨拶
  2. 院長挨拶
  3. リハビリテーションの紹介
  4. 療育活動報

2013.04.01

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