うみがめ第8号

うみがめ第8号

「iPS細胞と重症心身障害児(者)」 院長 春山 康久

京都大学の山中信弥教授が、2012年のノーベル医学生理学賞を受賞しました。

今回の山中博士の受賞は「成熟細胞が初期化され、多能性を獲得しうる現象の発見」に対して贈られたものです。平成24年のビッグニュースとなりました。

すべての生き物は、膨大な数の細胞から構成され、ヒトの場合は約60兆個の細胞から成り立っています。それらは、たった1個の細胞である「受精卵」が分裂を繰り返し、皮膚、心筋細胞、神経細胞等、体を作る様々な細胞が作られます。成熟(専門化)した細胞は決して別の種類の細胞にはなりません。失った臓器は再生されないということですが、今回の発見は成熟した細胞を未熟な状態に戻すことに成功したことで、臓器の再生医療に大きく貢献できる可能性を示しました。

マウスではiPS細胞から正常な精子や卵子をつくることに成功しており、このようにしてできた精子と卵子はそれぞれ、通常の卵子、精子と受精でき、生まれたマウスがさらに子孫を残せることも確認されています。また、iPS細胞の技術によって、病気になるメカニズムの解明が進み、薬を探すだけでなく、薬の毒性試験にも使え、新薬開発の実用化が期待されています。
「私の人生のすべての目標は、iPS細胞を患者さんのもとに届けること」ノーベル賞授賞が発表された直後の山中博士のコメントです。

筋ジストロフィーの患者からiPS細胞が作成され、細胞を提供した子供の親から「この子の治療には役立たないかもしれないけれど、将来、同じ病気のお子さんのために」と言われたそうです。iPS細胞が、ひとりでも多くの重症心身障害児(者)のもとに届けられ、重症心身障害児(者)が光を感じ、音を聞くことができる、そのような未来の治療が可能となる日が訪れることを願いたいと思います。

(参考資料)
1) iPS細胞とはなにか 朝日新聞大阪本社科学医療グループ ブルーブックス 講談社
2) iPS細胞 ニュートン12月号 2012年 ニュートンプレス

うみがめ第8号(PDFファイル)

  1. 松かぜ
  2. 院長コラム
  3. 医師紹介
  4. 療育活動報告
  5. 保育所紹介

2012.12.01

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