うみがめ第4号

うみがめ第4号

「待つ」ということ 院長 春山 康久

「できるだけ早く、目に見える成果を」出そうとする子育て。それを成功している教育が善しとされる風潮。「待てない教育」、「待てない子育て」が、今、この国に蔓延しつつあると思えてならない。これは、「待てない時代にどう育てるか~人間教育を育てるもの~」というタイトルで当時恵泉女学園(東京都)の校長をされていた安積力也先生の言葉です。本来子どもは「桃栗三年柿八年」なのに、「出来るだけ速く、目に見える成果を上げる教育」を親も教師も求めてしまう現状に問題提起をされたものであり、子どもの「内発性*」が育つためには「待つ」ことが必要であると言っておられました。

先の重症心身障害療育学会に出席し、重症心身障害児(重心児)とのコミュニケーションづくりで「待つ」ことの意義を発表した報告を聴く機会がありました。重心児との関係において、重心児の反応を待つべき時に焦って次の言葉をかけてしまう。重心児とのやり取りのなかで、重心児の反応を待つことで重心児の自発性が誘発され、表現の変化や伝達手段が獲得できたという報告でありました。

政治や経済の領域では待てない、即断を求められることもありますが、ふたつの出会いから教育、療育の現場では「待つ」という姿勢が必要で、待つことで育つもの、待たなければ育たないものがあるということを教えられました。

うみがめ第4号(PDFファイル)

  1. 松かぜ
  2. 院長コラム・医師紹介
  3. 病棟・外来紹介
  4. 療育活動紹介
  5. 診療科新設のお知らせ
  6. 各病棟行事
  7. 編集後記

2010.12.01

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