「理想郷(ユートピア)を求めて」 院長 春山 康久
重症心身障害児施設(重心児施設)は全国に194施設あり、約1万9千人とも言われる障害児(者)が入所しています。昭和36年5月、日本初の重心児施設である島田療育園(現島田療育センター)の開設は歴史にみられる通り、困難の連続でありました。障害者に対する差別や偏見で、時に経済的な事情でその経営が危ぶまれたこともあったといいます。50年前の多摩村(現多摩村市)は文字通り農村で、鬱蒼と茂る森には大きな蛇やウサギが生息し、戦時中には都心からの疎開者も少なくなかったそうです。
1967(昭和42)年旧厚生省は国立療養所の結核病棟が、患者の減少で「空床」が目立つので、この病棟の利用転換ということで、重心児病棟を開棟させることにしました。そして全国各地の国立療養所で重心児病棟がつくられ、在宅児が入所していきました。日本の重心児対策が「放置」から「収容」へと歴史的転換を遂げました。しかし初期の「収容」の実態はきびしく、病院システムということで、この子らにベットの空間を保証すればよいといった形で建物が作られていて、発達に必要な空間は保障されませんでした。入所の条件は就学猶予・免除をしている子に限るとされていました。
これまでの史実から、当然のことながら重心児施設は人里離れた場所に建設され、一般社会から隔離されていたことがわかります。愛泉会日南病院は平成14年、旧国立療養所日南病院から移譲を受けやがて10年目を迎えます。平成23年10月には施設の増改築が始まる予定です。建設にあたり「社会に開かれた病院」をコンセプトに掲げました。一般社会の子ども達が重症心身障害児(者)とふれあうことによって社会の中の偏見が取り除かれ、人の命の大切さを知ってもらう、そのような病院を目指しております。「重症心身障害児(者)にとっての理想郷とは?」今後とも求め続けていきたいと思います。
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2011.05.21
広報誌